【ミステリ】折れた竜骨(著者:米澤 穂信)
「我々の使命を果たし、かつ自らを律するため、我々は真実を明らかにするにあたって一つの儀式を行います」
『折れた竜骨』は『氷菓』の作者である米澤穂信のミステリだ。しかしこの『折れた竜骨』、中世を舞台にしたファンタジーであるから堪らない。剣と魔法の世界観でありながら推理小説の王道を行くのだ。
北海にあるソロン諸島の領主を父にもつアミーナは、騎士ファルクと従者ニコラに出会う。この騎士たちは魔術による殺人を請け負う暗殺騎士を追っているというのだ。とある事情から島の防備を固めるために傭兵を募っていた領主の元には、怪しげな連中が集まっていた。
そして領主が不審な死を遂げる。すぐに暗殺騎士の操る〈走狗〉によって殺されたのだと判明し、ファルクとニコラ、そしてアミーナは状況を分析、〈走狗〉を特定するために行動し始める。操られている自覚はなく領主を殺した際の記憶も失っている〈走狗〉を見つけるのに必要なものは、論理の力である。
怪しげな魔法が登場し、実際にその力を振るう場面も度々ある。しかし論理的に推定することによって犯人を特定する物語は、数学の証明問題のように答えを浮かび上がらせる。不死身の海賊たちが島を襲撃し、青銅の巨人がそれらを薙ぎ払い、素早い身のこなしで敵を翻弄する従者は剣の達人であり。ミステリでファンタジーな個人的に二度美味しい。なにより推理の結末はミステリとして十分に驚きをもたらすのだから、興味を持ったら是非とも読むべきである。
また最近、文庫になったのでお求めやすい。上下二冊あるが、一気に読み進められるだろう。
【ニュース】2012/02/23
【漫画】
池田ァ!
【いじめ問題】マガジン読切「聲の形」 お前ら、読んでどう思った?
話題の『聲の形』。
【ライトノベル】
『レンタルマギカ 未来の魔法使い』マギカ最終巻ついに来たか・・・
菊地秀行のように超俺TUEEE作品やっても叩かれない作家と叩かれる作家 何が違うのか
「気になるあの子のデータが丸わかり!TRPG風キャラクターシート」……を抽選ですか。普通に売って欲しいですよね。
【アニメ】
【画像あり】 今週のサイコパスの作画が案の定やばかったwwwww
修正するって宣言が出るくらいでしたからねえ。
【ゲーム】
『サモンナイト5』の発売日が5月16日に決定(公式HP/4Gamer)
遂に発売日が決定しました。『サモンナイト3』のレックスとアティも登場するようですね。抜剣者は不老ですが、メイメイさん並に便利そうな存在ですね。
『ダンジョントラベラーズ2 王立図書館とマモノの封印』のプレイムービー第1弾を公開(公式/ファミ通)
ターン制じゃなくて行動値順にキャラごとにコマンド入力する辺りは前作と違うのかな。
【ネタ】
文章は接続詞で決まる→(保存版)接続詞の常識チートシートにまとめてみた
最近もtwitterで話題になった永久機関。永久機関を実現するためにはエネルギー保存の法則を考えると、宇宙の法則そのものを打ち破る技術が必要になります。人類の科学技術が時空を超越するくらいまで発展したら可能になるレベルなのですが、ファンタジーですね。絶対に不可能。
【ライトノベル】生贄のジレンマ(著:土橋真二郎)
以下、メディアワークス文庫の公式HPから。
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2013/02/22
『生贄のジレンマ』、実写化決定!
卒業を間近に控えた生徒たちに課せられた、冷酷な《ゲーム》。土橋真二郎がジレンマの本質を描いた問題作、待望の実写化!
詳細は決まり次第、お伝えしていきます!
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実写化ってとこになんとも言い知れない不安を覚えるのは、自分が漫画とライトノベルを主戦場にしているからでしょう。そもそもMW文庫の作品がライトノベルと言えるかは人によって変わると思いますし。
さて生贄のジレンマ、表紙がゲームのルールを簡単に説明した図式という変わった装丁ですが、これがまず良いんです。読めば思わず手にとってみたくなる絶望的な二択。これでまず引きこまれます。
いつもの土橋真二郎なので、緊張感のある心理描写はバッチリ。実写化でこれがどう表現されるのかわたし気になります。
【漫画】紫色のクオリア(原作:うえお久光、作画:綱島志朗)
「毬井ゆかりはニンゲンがロボットにみえる。それは、変えることのできない彼女の絶対条件――」
原作のイラストレーターが漫画版を手掛けるのは、ファンにとって幸運なことだ。更に綱島志朗は元々漫画家なわけだから、原作の見どころを的確に汲み取って漫画にしている。面白くないわけがない。
主人公・毬井ゆかりは人間がロボットに見えるという変わった少女だ。彼女の視点では人間にセンサーやバーニアがついているように見える。序盤は友人・波濤学との交流を通じて、彼女の異質さと愛らしさを読者に堪能させ、徐々に決定的な「違い」を描くストーリーは丁寧に原作をなぞっている。
原作の1話目がまるごと1冊に収まっているのも嬉しいところ。
「警告しよう。ここから物語は、急変する――」
SFとしても評価が高い第2話『1/1,000,000,000のキス』の開幕。『紫色のクオリア』は2話目からが本番だ。第1巻で毬井ゆかりの異質さと友情のストーリーを前提に、2話目からは波濤学が主人公となる。とはいえ物語の軸はやはり毬井ゆかりだ。
転校生アリス・フォイルは数式が絵に見え、絵を描くことで計算を行なうことができる天才だ。毬井ゆかりは彼女から天才を保護育成する機関ジョウントに勧誘される。突然の海外留学の誘いに戸惑ったものの、波濤学は毬井ゆかりのためを思って彼女の背中を押すことにした。それが悲劇の始まりとなることも知らずに。
エヴェレットの多世界解釈、万物理論などSF要素てんこ盛りで物語は急激にスケールを拡大していく。
組織名やキャラクターの名前にアルフレッド・ベスターの名作『虎よ、虎よ!』から名前を拝借しているのも個人的にはポイントが高い。
原作はもちろん名著だ。漫画版が気に入って、活字に抵抗が無ければ是非。
【漫画】グラゼニ(原作:森高夕次、漫画:アダチケイジ)
「所詮プロはカネです」
「グラウンドには銭が埋まっている」
選手の年俸という観点からプロ野球を見たシビアな物語。
主人公の凡田夏之助は高卒プロ8年目で年収1800万円の中継ぎ投手。一流と言うには程遠い上に顔も普通のオッサンだ。
高卒でプロ8年目、ということは既に27歳である。スポーツ選手としては絶頂期、あと数年で引退のことも考えなければならない。むしろ活躍できない状態が続けば、あっという間に一軍落ちしてそのままフェードアウトしてしまう危うい立場だ。
『グラゼニ』はサクセスストーリーではない。しかし何度も壁にぶつかりながらマウンドで戦って年俸を上げていく。プロ野球選手として生きていくための土壇場を這いずりまわり、引退後の人生設計まで視野に入れて奮闘する姿は思わず応援したくなるものだ。
「生まれついての『中継ぎ』や!」
中継ぎから先発ローテーションに加わった凡田だが、最新9巻では「勝ち星」という投手にとっての結果を求められながらも、打撃の援護に恵まれず9回完封ながら0ー0の引き分けに終わったところから始まる。そして結果を出せなかったために、先発から中継ぎに変更され、更に二軍で調整を命じられてしまう。
この漫画の楽しいところは、とことん年俸にこだわる主人公・凡田のキャラクターと、それを取り巻く厳しいプロ野球の世界だ。夢も希望もあるけれど、それ以上にキツい現実に真正面からぶつかっていく凡田を、読んだらきっと応援したくなる。