エメラルド・タブレット

「こは偽りなき真実にして、確実にして極めて真正なり」

【漫画】グラゼニ(原作:森高夕次、漫画:アダチケイジ)

「所詮プロはカネです」

「グラウンドには銭が埋まっている」

 選手の年俸という観点からプロ野球を見たシビアな物語。

 主人公の凡田夏之助は高卒プロ8年目で年収1800万円の中継ぎ投手。一流と言うには程遠い上に顔も普通のオッサンだ。

 高卒でプロ8年目、ということは既に27歳である。スポーツ選手としては絶頂期、あと数年で引退のことも考えなければならない。むしろ活躍できない状態が続けば、あっという間に一軍落ちしてそのままフェードアウトしてしまう危うい立場だ。

 『グラゼニ』はサクセスストーリーではない。しかし何度も壁にぶつかりながらマウンドで戦って年俸を上げていく。プロ野球選手として生きていくための土壇場を這いずりまわり、引退後の人生設計まで視野に入れて奮闘する姿は思わず応援したくなるものだ。

 

「生まれついての『中継ぎ』や!」

 中継ぎから先発ローテーションに加わった凡田だが、最新9巻では「勝ち星」という投手にとっての結果を求められながらも、打撃の援護に恵まれず9回完封ながら0ー0の引き分けに終わったところから始まる。そして結果を出せなかったために、先発から中継ぎに変更され、更に二軍で調整を命じられてしまう。

 

 この漫画の楽しいところは、とことん年俸にこだわる主人公・凡田のキャラクターと、それを取り巻く厳しいプロ野球の世界だ。夢も希望もあるけれど、それ以上にキツい現実に真正面からぶつかっていく凡田を、読んだらきっと応援したくなる。